えすのおと

16歳の現役高校生 “えす” のブログ。

【私小説】人間とは、呆れるほどに貪欲で面倒くさい、愛すべき生命体。


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「お前ってほんとに面倒くさいよな。」

 

吐き捨てるように、誰かが言った。

 

あくまでも誰かが言ったのであって、それが誰かは分からないし、分かりたいとも思わない。

 

現に、私の周りには誰もいない。気配すらない。

 

あくまでもここにいるのは私だけで、ここにあるのは、私との対峙だけなのだから。

 

 

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人間は、呆れるほどに貪欲で面倒くさい。

 

無論、私もその人間の一人であることは確かな事実で、その事実に基づいた上で皮肉を込めてそう言いたい。

 

ヒーターで温められた足先とは裏腹に、首筋は寒気を感じている。

 

振り向くと、小奇麗なパーカーが、少々乱暴に脱ぎ捨てられていた。

 

 

貪欲と言うと何だか聞こえが良いが、言い換えるならば、欲深い。

 

それが人間であり、そんな生命体だ。

 

考えてみれば面白い話である。

 

ただがむしゃらに生きていただけの赤子が、気付けば生まれた意味を求め、自分にできることを求め、そしてそれらが満たされないことで勝手に遣る瀬無さを感じて生きているなんて。

 

成長は、残酷な側面も持ち合わせている。

 

何かしらの満足感がなければやっていけない。

 

言うなれば、高望み。分不相応。

 

本当に、面倒くさい生き物。

 

 

朽ち果てた大地の如く潤いを求める。

 

人はそれを、「人間味がある」とでも形容するのだろう。

 

だがその人間味が、時として苦しみさえ孕みながら私の心を抉る。

 

 

・・・

 

 

赴くままに外に出てみる、早朝5時。

 

寒い。ただひたすらに。

 

風が吹くと、肌に痛みさえ感じる。

 

パーカーを脱ぎ捨てたまま玄関の扉を開けてしまった自分を、少しばかり後悔した。

 

 

だがそこでは、日の出のときをじっと待つ空のグラデーションと街灯の光の調和が、見事なる幻想を浮かばせていた。

 

写真を撮り、部屋に戻れば、素敵な音楽が聴こえてくる。

 

付けっぱなしのヒーターが、凍えた身体を温かく包んだ。

 

時間が経てば、心地の良い日差しが始まりを伝えにくる。

 

そして2階へ上がり、風呂を沸かす。

 

その間にやかんを火にかけ、湯を注ぎ、2分だけ待った少し固めのカップ麺を啜ったりなんかして。

 

 

ありきたりだけれど、それで良いはず。十分だ。

 

なのに私は、どこか虚無感にも似たような感覚に襲われて、一人、ベッドに横たわっていた。

 

何かが枯渇してしまったのだろうか。

 

自分が嫌になってくる。

 

感情が、ゆっくりと沈んでいく。

 

 

そんなときに、あの乾いた声は聞こえてくる。

 

 

「お前ってほんとに面倒くさいよな。」

 

 

・・・

 

 

自分のことが好きだというのは、とても素敵なことのように思う。

 

自分のことが嫌いだというのは、ちょっぴり悲しいことのように思う。

 

私が死ぬとき、私は自分のことを好きでいられるだろうか。

 

今はまだ、全てを受け入れてあげられるような私ではないようだ。

 

 

人間とは、呆れるほどに貪欲で面倒くさい、愛すべき生命体。

 

最期のときを、そう思って迎えられるのなら本望である。

 

 

 

 

 

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最後までご覧頂きありがとうございました。

 

 

 

※この物語は小説のくせに ほぼほぼノンフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空ではなく、実在のものと関係があります。